PRODUCTION NOTES

 リーとウィルモットは脚本の作成にとりかかった。実在の人物と、完全にフィクションの登場人物、両方に光をあてる。リーの頭のなかには、ロン・ストールワースを演じるなら絶対にこの俳優という人物がいた。ジョン・デヴィッド・ワシントンだ。1992年にリーが監督を手がけた『マルコムX』では、父のデンゼル・ワシントンが主演を務めている。その7年ほど後の時代の物語に息子のジョン・デヴィッド・ワシントンが出演することになった。
 長い間憧れてきた監督から出演依頼の連絡をもらって、すごく嬉しかったとワシントンは振り返る「スパイクは、とっても変わった方法で俳優やスタッフを採用するんだ。僕は電話の短い会話で伝えられた。『本を送るから読んでくれ』って。原作を読んで圧倒されてしまった。そして、この作品についてスパイクと話をした。彼がどんなことを考えているか、どんな作品にしたいか、とかをね。彼の作品には、人種間の問題や男女間の問題が描かれていて、伝わってくるメッセージも作品が映し出している状況もリアルなんだ。そんな監督の作品に選ばれたなんて。めちゃくちゃ興奮したし、撮影が始まるのが待ち遠しくて仕方なかった」

 KKKのメンバーと直接会うときにストールワースのふりをする同僚刑事、フリップ・ジマーマンにはアダム・ドライバーを起用した。ジマーマンは、白人至上主義の扇動グループのメンバーに出会ったことで、ユダヤ人という自分のアイデンティティーについて改めて考えた。「心からの憎悪と直接向き合うことは、自分の価値観を見直すきっかけになる」ドライバーが語る。「この映画を通してスパイクが伝えているメッセージのひとつに、個人の過去は重要かどうか、という問題がある。僕が演じたジマーマンは思ったより内省的な人物で、掘り下げていくのが楽しかったよ」

 トファー・グレイスが演じたデビッド・デュークは、作品の中でも重要な人物だ。デュークのことを「アメリカの歴史の中で最悪の人物」と言う者もいる。リーの作品に参加できることを楽しみにしていたと同時に、デュークを演じるうえで、憎しみに満ちた彼の信念を何週間もかけて下調べしたという。「人生のなかで、最低な1ヶ月だった。1ヶ月間ずっとデビッドの映像を見て、彼のスピーチばかりを聞いていた」とグレイスが語る。「彼のラジオ番組を聞いた。今も続いている番組なんだ。映画では、その番組で喋っている声がいろんな場面で聞こえてくると思う」
 また、グレイスは、1980年代始めにフィル・ドナヒューのトーク番組にデュークが出演した映像も見たという。「彼が何度も繰り返し使っているフレーズがあることに気づいた。“アメリカ・ファースト(アメリカ第一主義)”、“メイク・アメリカ・グレート・アゲイン(アメリカを再び素晴らしい国にしよう)”とか。それに気づいてすごく驚いたんだ。なぜって、このフレーズを僕が初めて聞いたのは、数年前の選挙のときだったからね」  ストールワースは、ローラ・ハリアー演じる女性パトリスに出会う。ハリアーはこう語る。「強い女性って、探してもなかなかいないと思う。特に有色人種だとなおさら。脚本を読んで、私が演じるパトリスは成熟した大人の女性だと思った。フィクションじゃなくて、実際にいそうなリアルな感じがあった。最高に素晴らしい役だと思う」
 撮影が始まる前、コロラド大学の同窓会に連絡を取り、当時の黒人学生組織(BSU)がどんな活動をしていたのか調べたが、ハリアーの役作りはそれだけでは終わらなかった。アンジェラ・デイヴィスの自叙伝を読み、70年代にブラックパンサー党のリーダーを務めていたキャスリーン・クリーバーにも会いに行った。「スパイクが、キャスリーンを自宅に招くというのを聞いて、みんなで彼女に会いに行ったの。いろんな話をしたわ。たとえば、ブラックパンサー党のこととか、当時の経験をどう思うかとか、夫でありブラックパンサー党の仲間であるエルドリッジ・クリーバーとの関係は、とかね」

 俳優たちは最初から、ストールワースの実話とタイムリーなテーマを、今の社会に伝える責任を理解していた。リーはこう語る。「自分の作品のキャストを決めるとき、ものすごく慎重に細かいことを考えてながら選ぶんだ。この仕事を30年以上やってきたけど、今回の配役は本当に素晴らしい。もちろん演技も。どの俳優もこの作品のことを理解して、その役を通して何をすべきなのかきちんと分かっている」
 原作者のストールワースは、自宅のあるテキサスから、読み合わせのためにニューヨークにやってきた。ストールワースは、リーとウィルモットと話をしたり、ワシントンにアドバイスをしたり、他の俳優からの自分の過去に関する質問を受けたりして過ごしていた。ワシントンは、そのときの様子をこう語る。「ストールワースは、惜しげもなく自分のことを話してくれた。当時、社会で起こっていたことに対する感情だけでなく、潜入捜査のことや彼が見たもの、刑事になった方法、彼が築いた人間関係についてなど、いろんなことを教えてくれた。驚いたのは、KKKに潜入捜査を遂行するために、ストールワースが所属していた地元の警察署がたくさん協力してくれていたことだ」